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BED SIDE MUSIC――めくるめくお色気レコジャケ宇宙 【電子書籍/ダウンロード版】――ROADSIDE LIBRARY vol.006

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山口‘Gucci’佳宏+都築響一 編
PDFフォーマット  全2759ページ(3.65GB)
※ダウンロード版は、サンプル音源なし

メルマガでもおなじみの「日本でいちばん展覧会を見る男」であり、稀代のレコード・コレクターでもある山口‘Gucci’佳宏氏が長年収集してきた、「お色気たっぷりのレコードジャケットに収められた和製インストルメンタル・ミュージック」という、キワモノ中のキワモノ・コレクション。

グッチさんは「いまもまだ集めてる」そうですが、とりあえず2019年6月までに収集されたアルバム、シングル盤あわせて855枚! その表ジャケットはもちろん、裏ジャケ、表裏見開き(けっこうダブルジャケット仕様が多かった)、さらには歌詞・解説カードにオマケポスターまで、とにかくあるものすべてを撮影。画像数2660カットという、印刷本ではぜったいに不可能なコンプリート・アーカイブです!


[内容]
序文(都築響一)
解説(山口‘Gucci’佳宏)
1. アート系
2. ポーズ
3. エロ顔
4. ザ・ヌード
5. ムーディー
6. ビューティー
7. モード
8. 水着
9. 薄幸
10. 和
11. 美女と楽器
12. カクテル
13. 夜
14. クリスマス
15. イラストレーション
16. 竹久夢二
17. ヘンテコ
18. シンメトリー
19. 表裏使い廻し
20. シリーズもの
21. ボックス・セット
22. ジャケ帯
インタビュー(山口‘Gucci’佳宏)
収録音源について




「お色気レコジャケ」なんて初耳、というかたもいらっしゃると思うので、とりあえず僕が書いた序文をお読みください。
雑誌の巻頭や書店の写真集コーナーを彩るセクシー・グラビアを眺めながら、ふと思う。どうして自分はこういうグラビアアイドルに惹かれないのだろう。

それはたぶん、「幸薄く見えない」からだ。見事な身体に、見事な顔。極小水着を食い込ませようが、縄で縛られようが、彼女たちはすべてのカットで自信にあふれ、鼻息荒くページをめくる男性読者を上から見下ろす。その行く手に、とりあえずこれから数年は立ちふさがるなにものもない(ように見える)グラビアアイドルたちに、不幸な陰はひとかけらもない。それが僕を萎えさせる。

1960年代から70年代初期にかけて各レコード会社から無数にリリースされ、いつのまにか跡形もなく消えてしまった、「夜のムードを高める」ためのインスト・レコードという音楽ジャンルがあった。

よく知られた歌謡曲やスタンダード・ナンバーのインストルメンタル・バージョンをただただ並べ、ときとして曲と曲のあいだにセクシーなお姉さんの語り(ナレーション)を入れてアルバム全編をつないでいく、なんともユニークな形態のアルバムを、音楽ファンのどれほどが知るだろう。

いま「インストバンド」というと、「あらかじめ失われた恋人たち」のようなダブだったり、テクノやジャズだったり、意図的にボーカルを排したアーティスティックな音楽を指すわけだが、1960年代から70年代初期にかけては、そういうオリジナリティを追求する音楽とはまたちがうインスト・レコードが無数に作られていた。一時は日本中のレコード店に流通し、なかにはかなりの枚数を売り上げたアルバムもあったけれど、70年代後半ごろから急激に廃れていって、いまではまったく見かけなくなってしまった。

「夜のムードを高める」目的と書いたが、実はインスト・レコードが実際、昭和40年代の日本でどのように使用されたのかはよくわかっていない。インスト・レコードが出回っていた当時、僕は子供すぎたし、制作に携わっていた人々はすでにレコード会社にほとんど残っていない。真摯な音楽ファン向けではなかったろうから、それについて書かれた文献もない。音楽雑誌にすら取り上げられなかった、昭和の夜のBGM・・・・・・。

ジャケットの雰囲気や内容からして、「夜用」を主に意図されたのだろうが、いざというときになって、こんなヌード写真のアルバムを取り出してきたら、女は燃えるよりも萎えるのではないかという気もする。とはいえ曲自体はあくまでインストルメンタルであって、「官能小説朗読」とかではないので、オナニー用途にも向かなかったろう。

「意味不明」のレコード群は、そのつくりもまた、いい意味でも悪い意味でもユニークだった。まず、タイトルがてきとう。「ピンク」と「ムード」と「夜」と「誘惑」と「サックス」を組み合わせれば一丁上がり、みたいな。

そしてデザインがてきとう。曲の内容とまったく関連のない、単なる外人女性ヌード写真が全面にフィーチャーされ、なのに曲は純邦楽という、ねじれきったケースが大多数を占める。

そのヌード写真、お色気写真も表ジャケットと裏ジャケットで、同じ写真を反転して使用したり、それすらも面倒くさかったのか、そのまま2回使っているケースまである。現在ではとうてい考えられない、デザイナー絶句の荒業だ。

そしてまたタイトルの書きかたで、全編インストであるにもかかわらず、一見オリジナルの歌曲コレクションであるように錯覚させるジャケがある。よ~く見ると演奏者が表記されているが、中にはダブルジャケットの内側にしか表記がないものもあり、そうなると買ってみるまでわからない・・・・・・騙しですね、ほとんど。

そういう適当さがどくどく滲み出るお色気インスト・レコードだが、多くの場合、演奏者は一流、超一流のプロ・ミュージシャンが担当していた。ただ、こうした楽曲はレコード会社の買い切りが普通だったため、ひとつの演奏が何度も手を変え品を変え、というかバンド名を適当に変えたりして、くりかえし使用されているのも特徴だ。ミュージシャン本人も知らないままのレコードも、けっこうあるかもしれない。

しかも、そのようにインストの演奏であるにもかかわらず、ジャケットには全曲の歌詞が印刷されていることが珍しくない。これは「聴いてるうちに歌いたくなった人用」だろうか、カラオケ以前の時代のカラオケ代わりだったのだろうか。

知れば知るほど、謎が深まるばかりである。

こんなふうにてきとうにつくられ、てきとうに消費されて、だれも気にしないうちに消えていったのが、昭和40年代の日本に現れ消えたセクシーな徒花・お色気インスト・レコードだ。そうして、レア・グルーヴとして高値がつくこともなく、和物DJ諸君ですら見向きもしない、中古レコ屋のエサ箱でホコリをかぶったままの不良在庫を、ひたすら集め続けた男がいた。

レコード・コレクターの山口‘Gucci’佳宏氏による約850枚の日本人演奏もの「お色気ジャケ・インスト・レコード」コレクションを紹介する、これは本邦初の(そしてたぶん最後の)決定版電子書籍である。

いまから40年前、50年前だから、モデルの質だってグラビアアイドルとは比較にならない。現在なら全員「熟女枠」に入れられてしまいそうな、くたびれた身体が堂々と30センチ角のLPジャケットに収まっている。その写真とても、ほとんどはアルバムのために撮影されたのではなく、通信社あたりのストックからてきとうにえらんだものだったろう。

無邪気に微笑んだり、思わせぶりにからだを投げ出す彼女たちは、自分のセクシーな写真がはるか極東の島国で、『ウナ・セラ・ディ東京』や『人形の家』や『黒ネコのタンゴ』と一緒になっていることを知るよしもない。

てきとうな選曲と、てきとうなデザインと、てきとうな写真。そんなふうに消費されるけなげな熟女モデルの表情から、身体から、そしてジャケットから滲み出る「陰」の深みに、きみの官能はどうかきたてられるだろうか。

繰り返しになるが、これらのレコードはいまから40年前、50年前につくられたものである。そして、ここまでくればもうおわかりのように、この時代のほうが実は、現在よりずっと、レコジャケ・デザインは自由だった。

半世紀前とは比較にならないほどポピュラー・ミュージックの地位が向上し、比較にならない量の新譜が量産され、プロフェッショナルなグラフィック・デザイナーがジャケットを手がけ、大手レコード会社に頼らないインディーズも増えて、そうしていま、ヌード写真を使用したジャケットを見かけることはまずない。別にヌードだからいいというわけではないけれど、「オトナのお色気」を醸し出すジャケットすら、ほとんどない。

ほかの印刷物と同じように、レコードやCDでも過剰な性表現は取り締まりの対象になるが、音楽業界が特別厳しい規制のもとにある、なんてことはない。「放送禁止歌」と一緒で、すべて制作側の自主規制によるものだ。大手のレコード会社だけでなく、インディーズですら。

いま、音楽業界は「子供の音楽」によって生き延びている。エクザイルからAKBからビジュアル系まで。「何年も映画館に行ってない」ように、「何年もCD買ってない」オトナが、どれほどたくさんいることか。

オトナが買うからこそ、オトナの色気をアピールするジャケットがあったのだろうが、いまやオトナが買いたくなる音楽自体が減ってしまった。いや、あるのだけれど、メディアに乗らなくなってしまった。音楽業界では昔の音源の「リイッシュー」がブームで、それはたしかにオトナ向けだけど、何万円もするボックスセットを予約購入するような、マニアックなオトナ向けの商品でしかない。

かつてのように音楽が、そして音楽自体だけでなくレコード・ジャケットというものが、日々の生活空間のなかで存在感に輝く時代は、もう二度と来ないのだろう。あらゆるレコード・コレクション道のうちでも、最底辺の一角を占めるにちがいない「お色気インスト・レコード」という徒花。それは秘宝館やラブホテルやピンク映画ポスターと同じように、失ったことすら気がつかないままに僕らが失ってしまった、たからものでもある。「てきとうさ」という、オトナのフィロソフィでもある。

見ているだけで昭和のお色気にむせてしまうような2500枚以上の写真に加えて、

・山口‘Gucci’佳宏氏による詳細な解説

・当時日本コロムビアに所属し、演奏を担当したサックス奏者・稲垣次郎氏のインタビュー

・CDでは聴けない珠玉のサンプル音源5曲!
1. ナイチンゲール
「ECSTASY 恍惚/エクスタシー 川原正美とエキゾティック・サウンド 」より
2. ヘイ・ジュード
「ロックとラテンの激突 見砂直照と東京キューバン・ボーイズ & 稲垣次郎とソウル・メディア」より
3. 学園天国
「歌謡ヒット速報 稲垣次郎 ゴールデン・ポップ」より
4. ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー
「真夜中のレキント・ギター ベッドで煙草を吸わないで 木村好夫とザ・ビイアーズ」より
5. あなたが帰った鏡の前で
「愛しすぎて男を天国に行かせた女のお話」より

30センチ角のLPジャケットはスキャナーからはみ出してしまうので、1枚1枚、永遠に続くかと思われた複写作業を経てのデジタル・コレクション化。これ以上のアーカイブは、今後もありえないと断言できます(まあやろうというひともいないだろうが)!

ほんの40~50年前に日本の音楽業界はこんなものを大量生産していて、いまはすっかりなかったことになってる!という、秘宝館やオールドスタイル・ラブホテルやキャバレーの踊り子たちとまったく同じ「忘れられた宝物」を、ぜひご覧ください。


■全画像の中から特選ジャケット、600枚ほど選んで高速スライドショーにしてみました。1カット1秒で8分弱あります!(笑)年齢制限あり!
https://www.dropbox.com/s/qceor9ii4eg4f0z/20190710_bedside-music.mp4?dl=0

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